(長文日本語での誤字脱字文法エラーをお許しください)
私は60年ー70年代の日本経済急成長と90年から始まる経済低迷を見てきた。
昨日はトヨタがまた全世界リコールを発表。フュエルライン(ガソリンパイプ)に欠陥が見つかったそうだ。BMWやDaimlerではあり得ない回数のリコールが日本の自動車メーカーで行われている。日本の経済低迷問題の理由は「円高で輸出が減った」とだれもが口を揃えて言うが、実際「日本製製品の国際競争力」が低下しているのではないか?いや、それ以前に「安かろう、悪かろう」の時代が終わったのではないだろうか?
日本のお家芸は「安く高機能な物を量産する」手法で60年代から世界へWalkman、テレビ、玩具、自動車、AV機器を輸出した。それら製品には即に言う「 ソニータイマー」(Sony timerとは、「ソニー製品に破壊タイマーが埋め込まれていて、製品寿命をコントロールしている」という都市伝説。) が組み込まれているように壊れる製品が多く、現在では当時のWalkman、ビデオデッキ、カメラ、テレビや車は数多く生存していない。これに比べ現在好景気で車両の中国輸出が輸送船不足で追いつかないドイツの製品は、カメラも車両も数多く現役で生存している。iPodのシリコン物は数多く生存している(HDは完璧に寿命物)。現在日本の製造業は完成品ではなく半導体などコンポーネントで地位を確立している。香港在住中私はPhillipsのテレビとDVDプレイヤーを購入した。日本製より信頼できると販売店の店員に勧められ50″と26″を購入し5年後の今でも問題なく社員は利用している。
編集追加:@rokusouhonndaさんからのtweet “@HidekiOnda 解っておっしゃっていると思いますが、ソニータイマーはメカトロ時代に小型軽量化で突出していたソニーを揶揄する時に使った言葉で、今世紀に入ってからのソニーの着荷不良や故障率は家電メーカー中にあって優秀な数値になってるんですよ”
二つのMade in China
1970年から日本は積極的に「テクノロジートランスファー」を行い、製品の生産拠点を中国(最初は台湾)に移してきた。父の会社も花火の技術をまずは台湾へ、その後中国へ移植してきた。全世界が同じ動きをする前にできるだけ早く中国へ進出しなければ「今後価格面と量産可能数量で他社と競争ができない」と世界中のメーカーが中国へ工場やアセンブリーラインを移した。結果米国指導の工場、欧州指導の工場と日本指導の工場が中国に出来上がった。これらの工場は今でも当初設立時の教育影響を受けている所も多い。年配の工場長等が「私はドイツ語をしゃべる」と話しかけてきたり、ライン内の注意書きに中国語とドイツ語が書かれていたりする。
私の会社も多くの製品を中国で生産する中、色々な工場を回った経験から二つのMade in Chinaがある事に気がついた。一つは日本とアメリカの生産教育を受けた工場。安価で最低限品質をクリアする製品を生産する工場で、主に製品保証期間内以上の製品寿命をデザインや部材に取り込んでいない。もう一つは欧州、特にドイツ的な物作りをする工場だ。二つの工場の差は単に生産部材や行程の違いではなく「デザイン」の違いも多い。勿論「重厚」に作られている物はコストが高いし、製品の生産へこぎ着けるまでは慎重で安価な工場より時間がかかる。
ドイツ的デザイン
結婚前Steve Jobsのパロアルトの自宅には家具も無く、BMWのバイクR60/2が中央におかれていた。彼はこのバイクを毎晩静かに眺めながら作り手の魂を理解しようとしたのだろう。良い物は美しい。美しい物は機能も良いと思ったに違いないだろう。
彼はこよなくドイツのエンジニアリングを愛し、車はベンツしか買わなかった。持ち主より長く生存する製品を生産する「ドイツ的物作り」をJonathan Ivesに強調したのだろう。その結果今のiPhone、iPodやアルミ削出しのMacがある。Audi, Leica, Porsche, Daimler, BMWとGermanエンジニアリングはこの不況の中でも最高の収益を発表している。医療や精密機械の分野でも各国は好んで「Made in Germany」を購入している。ドイツ製品と日本製品を比べると完全に「デザインの概念が違う」ことに気がつく。キャノンのカメラとライカのカメラ。BMWと本田の自動車。これら製品を比べると簡単に「重量」が違う事がわかる。この重量の違いが製品の「耐久性」に現れる。70年代のアコードは今待ちを走っていないが70年代のBMWはたまに見かけることがある。50年代のライカはまだまだ現役で使用されているが50年代のキャノン製品はあまり見かける事は無い。この違いは主に素材とデザインにあると思う。この辺の違いが日本経済とドイツ経済の違いに直接出ているのではないかと私は思う。
日本的マーケティング
日本の車は燃費、価格や豊富な機能により80年代から世界中で爆発的に売れた。Jobsはソニーの盛田や出井を尊敬していた。それは「物作り」ではなく痒い所に手が届く「機能」とそれを「マーケティング」する手法にある。1960年、盛田が単独で米国へ渡りニューヨーク5番街にSONYのショールームを開いた。トリニトロン、ウオークマン等天才的なブランディングとそれを支える技術で全世界のブランドとなった。
Apple製品
長期生存を考えた場合、日本の物作りは「過去の栄光へ戻せ」ではなく、将来は「ドイツ的エンジニアリング+日本的マーケティング」を取り入れ重厚で長持ちする製品作りを目指さないと行けない。安価な製品を使い捨てするのではなく、多少値段が高くても長い間使える製品を生産した方が良いと思う。Apple製品が成功した理由もここにあると思う。未だに5年前のMacを利用している人を多く見かけるが5年前のNECや東芝PCを利用している人は殆ど見ない。アルミ筐体のMacは何十年現役で残るのか?これは生産国の問題ではなく製品デザインが一番重要である事の現れである。
PS
弊社は今日TurtlebackなるiPhone用カメラケースとレンズを発表した。私の友人が香港で長い年月をかけてデザイン、生産している製品だ。今日朝リリースを流しtweetしたが、「高い」と言う意見も出た。”その値段ならコンデジが買える”というもっともな意見も。しかしカメラはある程度重量があると安定する。また今後EFマウントなど本体へ大きな重量負担をかけるアダプターが開発されるので「強度」が重要。そのため一つ一つ削り出しのアルミで作られている。私がこの製品に惚れたのは「ドイツ的エンジニアリング」で作られているからだ。レンズをはめるネジの構造やトライポッドマウントもLeicaと変わらないぐらい素晴らしい。良い物は安くは作れない。良い物は長い間オーナーに満足いく機能を提供し続けるだろう。このような素晴らしい製品を販売させていただき感謝している。